お隣さんは意地悪センセイ!
さっき、控え室に一人の男子が入っていくの見えたし。
きっと、長瀬くんだろう。
「え、き、来てるんですか!?あいつ何も返事しなくて……」
「そろそろ披露宴始まるから、高梨さんは戻りな。後は俺が適当に長瀬くん引っ張ってきたらいいでしょ?」
今、彼の気持ちが痛いほど分かる。
まるで昔の自分を見ているようだから。
「え、でも……あたしが言い出したことだし……あたしが最後まで…!」
「へぇ、折角コース料理、楽しみにしてたんじゃねぇの?」
メイクやら衣装やらで朝ごはんを食べていない高梨は相当コース料理を楽しみにしていたみたいだ。
「ウェディングケーキ入刀も楽しみにしてただろ?」
ギクッと肩を上げる高梨に笑いが込み上げる。
「ほら、早く行きな。俺は後から長瀬くん連れて戻るから」
そう言ってやると、高梨はぐっと拳を握りしめて頭を下げた。
「あ、ありがとうございます!長瀬のこと、よろしくお願いしますっ!」
勢いよく顔を上げた高梨はとびきりの笑顔だった。
「フッ、人の為にそこまで必死になって……」
本当、変わってる。
と言うか、単純にそういう高梨の一面が羨ましい。
俺には持っていないものだから。