お隣さんは意地悪センセイ!
「……長瀬っ…」
高梨も驚いているのか席を立ち上がる。
遅ぇよ、長瀬クン。
そう思いながらも、内心ホッとしていた。
ゆっくりと歩を進めた長瀬くんは、松木先生の目の前で立ち止まる。
そして、屈託無い笑顔で微笑んだ。
「鈴香……いや、松木先生。結婚、おめでとう。」
長瀬くんの言葉に松木先生はボロボロと涙を零す。
隣で見ている高梨も、息を飲んで二人を見つめている。
「コウ……わたし、私ね…」
「あ〜あ、こんな綺麗な松木先生見逃してたら絶対後悔してたわ!来て、よかった!」
涙を流しているのは松木先生だけじゃない。
今にも長瀬くんは泣きそうで。
あのバカ、泣きそうな顔して笑ってんなよ。
もっと言いたいことある、出来るなら、自分のものにしたいって思ってるくせに。
「……絶対、幸せになれよ。」
彼女の幸せを願うことしか出来ない。
幸せにするのは、自分じゃなくたって。
好きな人の幸せを願うことは、あたたかいことで、とても切ない。
よくやったよ、長瀬くん。
大きな拍手と歓声に包まれ、新郎新婦は退場して行ったのだった。