お隣さんは意地悪センセイ!
疑うそぶりもなく、長瀬くんは興味なさそうに相槌をした。
「で、長瀬くんは何で松木先生に気持ち伝えなかったの。」
高梨の話によると、長瀬の気持ちを松木先生に伝えたい!なんて言ってたのに。
「ハッ、言えるかよ。旦那隣にいんだぞ。……って言うのはまあ、俺が意気地なしなだけで。実際は、ウェディングドレスを着た幸せそうな鈴香を見たら何かもうよくなってさ。言えなかったおめでとうが、素直に言えた。」
吹っ切れたような長瀬くんは清々しそうで。
「もう、過去になってくんだよ。きっと何年か経ったら良い思い出だって、言える気がする。」
その笑顔を見た瞬間、俺の昔話の効果もあったんじゃないかと思って何だか安心した。
「先生はさ……もし、彼女が結婚する前に戻ったら…奪い去ってでも自分のもんにしてた?」
8年前の自分に、そんな勇気はあっただろうか。
長瀬くんのように、面と向かっておめでとうを言えなかった自分に。
「どーだろね。でも、今なら……もう絶対離さない、って言ってるかもね。」
もう、未練も何もさらさらないけど。
もし、8年前に戻れるのなら
『おめでとう。』って心から言ってあげたい。