今しかない、この瞬間を
じわじわ喜びが湧き起こって来る。

平静を保とうとするけど、顔がニヤけちゃってどうにもならない。


だって、その言葉、嬉し過ぎる。

この際、「友達」でも「妹」でも何でもいいや。

彼が私の存在をそこまで認めてくれているなんて、夢みたいだ。


言っちゃった彼の方も、照れ臭いのか、何となくモジモジしている。

そのくせ、今の言葉に被せて、さらにテンションが上がるようなことを言い始めるんだから、ホント罪作りな奴。


「あの時の痴漢にも感謝しなくちゃな。」

「えっ、やだよ。」

「あははは.......うそ。感謝とまでは行かないけど、あれがなかったら、こんなにすぐ仲良くなってないかなって思わない?」

「まぁ、それはそうかもしれないけど。」

「自分でも不思議なんだよな。あの時、なんであんなに必死になれたのか。」

「え? 」

「お前じゃなかったら、助けてなかったかも。」

「.......そう、なの?」

「だって、まだ知り合う前なんだから、スルーだってできただろ?」

「うん。」

「なのに、お前の不安そうな顔見てたら、勝手に体が動いてたんだよね。」

「.......。」

「あ、でも、この話、前にもしたっけ?」

「え? あぁ、うん。」

「マジ? しつけーって?」

「ううん、全然。同じ話だけど、言ってる内容とか違うし、私的には今日言ってくれたことの方が嬉しいかな。」

「そう?」

「うん。あの日、会えて良かったなぁって、私も改めて思った。」


って、何なの? この恥ずかしい会話は。

こんな話をした後に、どんな顔して向き合えばいいのかわかんないよ.......


何だかすっごいドキドキする。

顔を上げても、彼の目を真っすぐ見られない。
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