今しかない、この瞬間を
どうしようかと思っていたら、ちょうどいいタイミングでチャイムが鳴った。

里菜ちゃんたちが来てくれたようだ。


胸を撫で下ろして玄関に向かうと、二人は満面の笑みを浮かべて立っていた。

そして、出迎えた私と彼を順番にジ~っと見ると、何やら意味深な表情で、ニンマリ顔を見合わせた。


「いらっしゃい。待ってたよ。」

「何かいいねぇ、こういうの。新婚さんのお家に遊びに来たみた~い。」

「えっ? なっ、何言ってんの?」

「だって、お似合い過ぎるんだもん、この二人。しょっちゅう行き来してるんなら、一緒に住んじゃえばいいじゃん。」

「や、やだ。そんなんじゃないって!!」

「上山さんが、ここで何も言わないところが怪しいよな。」

「そうそう。普段、あんだけチャラチャラしてるくせして、何、黙って隠れてんの?」

「うっせ~、いいから早く上がれよ。」

「はぁ~い。そんなに照れなくてもいいのに。」


二人が現れて、一気に賑やかなムードになったのは良かった。

ああは言っても、彼もニコニコしてるし、すでに場は盛り上がっている。


だけど、この人たち、もしかして、今日はそういうつもりで来てるのかな。

ありがたいけど、それは困る。

別の日ならともかく、今日は絶対ダメだって!!


寄りによって、こんな微妙な状況の時に勘弁してよ。

これからお酒も入るし、勢いで変なこと言っちゃったらどうしよう.......


浮かれてる場合じゃないじゃん。

彼はまだ朱美さんが心に秘めていることを知らない。

てか、良く考えたら、私が朱美さんとの関係に気付いていることすら知らないんだよね?

あぁ、何か気が重い。


今日は言えないことがいっぱいある。

とにかく、里菜ちゃんたちの攻撃に気をつけないと!!

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