今しかない、この瞬間を
*:.。. 10. 気付いてほしい
*:.。. 10.
唇を噛み締めていないと、泣くのを我慢できなかった。
バレてたんだ。
しかも、そんな風に誤解されてたんだ。
こんなことになるなら、先に言っておけば良かった。
悲しいのと、悔しいのと、切ないのと、後悔するのと、好きっていう気持ちと.......
いろんな感情がグチャグチャに混ざり合って、胸をギュッと締め付ける。
だけど、我慢。
バスが行ってしまうまでは。
ほら、ほら、笑って!!
子供たちが手を振っている。
こんなにこの仕事が辛いと感じるのは、初めてかもしれない。
感情と逆の表情をするのは、本当に難しい。
バスが見えなくなるのと同時に、ダッシュでトイレに向かって、個室で涙を流した。
どうしてこんなことになっちゃたのかな?
相手が田澤さんなら、問題ないと思ったのに。
一緒にいるとホッとするって、彼が言ってくれたのは、やっぱり恋愛感情は抜きにしてっていうことなのかな。
淵江コーチと仲良くしてると、嫉妬してるように見えるのも、私の思い過ごしなのかも。
所詮、彼にとっては私は、単なる「友達」か「妹」みたいなものなんだろう。
そうじゃなきゃ、あんなことは言わないはずだ。
田澤さんと上手く行けばいいなんて、本当に本気で思ってるのかな。
確かに田澤さんは、文句の付けどころがないくらいカッコいい。
彼と出会ってなければ、きっと私も憧れていただろうし、従業員にも会員にもファンは多い。
完全に「高嶺の花」なんだから、狙うなんて恐れ多いし、とんでもない。
だから、油断してたというか、まさか田澤さんにそんなことを言われると思ってなかったっていうか.......