今しかない、この瞬間を
勤務二日目も、晴れ渡った気持ちの良い天気だった。

今日から職場で彼に会えるんだと思うと、何をしてても心が弾む。


子供向けのサッカースクールは、一番早い幼稚園児のクラスが3時から。

着替えやらミーティングやらがあるだろうから、恐らく2時くらいには出勤して来るだろう。

その時間には間違いなくフロントに立っているはずだから、少しくらいなら、話ができるかもしれない。


「おはよう、小坂さん。」

「あ、田澤さん、おはようございます。」

「どう? 慣れた?」

「はい。皆さん、優しいし、楽しいです。」

「そう。なら、良かった。小坂さん、いつもニコニコしてるから、フロントの雰囲気も明るくなっていいよね。」

「そうですか? そう言っていただけると、嬉しいです。」


キッズスクール全般の統括エリアマネージャーを務めている田澤さんは、とても優しい。

その上、整った顔立ちに程よく甘さがミックスされている、いわゆるイケメン。

制服の半袖のポロシャツから覗く、きれいに筋肉がついた腕だって魅力的だし、体育会系ならではの自然に漂う男らしさもステキ。

大人っぽくて落ち着いているから、話していて安心するし、彼に出合っていなければ、田澤さんを好きになっていたんじゃないかと思うくらい。


「そう言えばさ、ここのサッカースクールのコーチで、小坂さんちのすぐ近くに住んでる奴がいるんだ。」

「あ、はい。」


おっと、早速、その話が来ちゃった?

それって、きっと彼のことだよね。

最寄り駅が同じなのはわかったけど、実際、どの辺りに住んでるんだろう。
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