今しかない、この瞬間を
*:.。. 4. 禍を転じて福と成す
*:.。. 4.
健康の種を蒔こう、
才能の種を蒔こう、
みんなの幸せの種を蒔こう、
〜 seeds sports garden 〜
スクールバスの車体に描かれている双葉のマークと、CMでも流れているこのキャッチコピーが、バスを見送った直後から、どうしても頭を離れない。
バスが行ってしまうまでは絶対に泣いちゃいけないと思い、穴が空くほど、じっと見つめていたからかもしれない。
後から聞いたのだけど、今日は近隣の小学校が遠足で、どうやら低学年は、サッカースクールの時間に微妙に間に合わなかったらしい。
幼児クラスのすぐ後の時間帯の小学1・2年生クラスに所属する子たちは、見事に全員が欠席だったそうだ。
今、考えれば、彼があんなことをしていたのは、それでコートに誰もいなかったからなんだろう。
そうでもなきゃ、あそこまで大胆なことができるはずがない。
なのに、その超レアな瞬間に居合わせる私って、どこまでツイてない訳?
水筒の忘れものといい、偶然にしちゃ、出来過ぎてる。
まるで今後の私の恋の行方を物語ってるようで、無駄に悲しくなってしまう。
3・4年生クラスともなれば、もうバスに乗る子たちのお迎えは必要ない。
だから、その日は、それから彼と顔を合わさずに済んだ。
正直、助かった。
だって、どんな顔をして、彼に会えばいいのかわからない。
私があの場にいたなんて、彼はもちろん知らないし、こんなに落ち込んでいたら、変に思うに違いない。
それを本人から聞かれるなんて、拷問だ。
見ちゃったなんて、口が裂けても言えるはずがないし.......