今しかない、この瞬間を
会社に行っても、仕事を進めていく上では、何の影響もなかった。

横取りオバさんが私を呼び出すこともなくなったから、むしろ仕事もはかどるくらいだった。


以後、業務連絡以外でこのバカップルと口を聞くことはなかったけど、私が何事もなく普通に働いていることで、本宮くんがダメージを受けているのは感じた。

そのくらいの制裁なら、罪はないだろう。

そばに行く度に何かを切り出そうとする彼に、そっけない態度の私。

滑稽なほど切ない表情を浮かべる彼を、心の中でいい気味だと思った。


だけど、そんなことを続けていたら、当然のごとく、オフィスの雰囲気は淀み始める。

私と本宮くんが付き合っているということは周知の事実だったから、その話題には触れないよう、過剰なほど周りが気を使っているのは、何となくわかった。

こんなことで、みんなを煩わせていると思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


自分でも自分がイヤになった。

これじゃ、元カレに嫌がらせしているのと同じじゃん。

フラれたのは私の方なのに、何か性格悪い女みたい。


こんな奴に未練はないし、もう十分、仕返しもした気がする。

別にこの会社にしがみついている理由もないし、第一、こんな空気の中で働いていても楽しくない。

だったら、忌まわしい思い出を吹っ切るためにも、いっそのこと、この場を去るべきなんじゃないかな.......


そう思い始めてから決心するまでに、時間はかからなかった。

そもそも、悪いのは私じゃない。

いつまでも後ろ向きな気持ちで過ごすなんて、性に合わない。
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