今しかない、この瞬間を
新しい環境に身を置けば、明るい気分になれるはず。

だから、とにかく、ここを出よう。

そうすればきっと、また自分らしい自分に戻れる気がする.......


その選択は正しかったと思う。

私は決して逃げた訳じゃない。

あそこにいて、みんなが顔を見合わせながら働く原因になるくらいなら、自分から退いた方がいいに決まっている。


当たり前だけど、「一身上の都合」について誰にも追及されることもなかったし、自分でも納得の行く円満退社だった。

しばらくはゆっくり休んで、今の自分を奮い立たせるような仕事を探そう。

職種は何でもいいから、楽しくてやりがいのある仕事。

前向きな気持ちで、笑顔で過ごせそうな会社がいい。


気分を改めるのにもイイと思って、まずは引っ越しをした。

新しいスタートを切るために、本宮くんとの思い出がないところに行きたかったから。


次の仕事は失業保険と僅かな貯金が尽きるまでに、のんびり探せばいい。

多少、貧乏暮らしが続いたとしても、焦って後悔するよりはマシだ。


だけど、そう思って今のアパートに移り住んですぐ、駅でスポーツクラブのポスターを見かけた。

明るくて、楽しくて、健康的なイメージ。

まさしく、今の私に必要なもののオンパレードだ。


仕事が決まって、お金に余裕ができたら、こういう場所で汗を流すのも悪くない。

なんて思いながら、家に帰って、買って来た就職情報誌を開いた。

すると、真っ先に飛び込んで来たのは、さっき駅で見た「seeds sports garden」の広告だった。
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