今しかない、この瞬間を
振り向いてくれなさそうな人を思い続けるのは、楽じゃない。

自分で言うのも何だけど、ただでさえ、一つ前の恋であんなに辛い思いをしているのに、懲りない女だ。


それでもいいから好きでいたいと思う人と、出会えただけでも幸せなのかもしれない。

今のところ、恐らく、朱美さんを除けば、一番そばにいるのは私のようだし。


総じて、彼への思いが届かないこと以外は、現状にとても満足している。

前の会社にいた時よりも、今の方がはるかに充実していると思うし、毎日が楽しい。


だから、余計に、こんな呆れた招待状が届けられたことに腹が立った。

どう考えても行くはずがないし、思い出したくもない。

楽しい毎日に水を差されたようで、頭に来た。


だって、これって明らかに私に対する嫌がらせでしょ?

目の前から消えてあげたのに、まだ気が済まない訳?


こんなの無視。

私には、もう関係のない人たちだ。

敢えて無反応でいた方が、向こうにも堪えるだろう。


とりあえず、部屋まで持ち帰ったけど、開封するのもシャクだから、そのままにしておいた。

結婚でも何でも好きにすればいい。

こんなに早く結婚するなんて、本宮くんは、どうせあのオバさんの言いなりになってるんでしょ。


ホント、情けない男。

そう言えば、結局、ほとんど話もせずに別れちゃったけど、その後、どうしてるのかな。

別に知りたくもないけど、なんでこんなことになったのか、細かい事情もわからないままだし。


だいたい、ここの住所なんて教えてないのに、誰に聞いたんだろう。

もしかして、嫌がらせのために、わざわざオバさんがどっかで調べて来たとか?

だったら、尚更、無視。

気にするのもバカらしい。
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