今しかない、この瞬間を
「結構飲めるんだね、あかねちゃん。」

「そう?」

「てか、何かイヤなこととかあって、今日はいっぱい飲みたい気分とか?」

「え? あぁ、イヤなことがあると言えばある。」

「マジ? 何? 何? この際だから、言っちゃえよ。」

「え~? ヤダ、いいよ。」

「なんで?」

「なんでも!!」


言われてみれば、楽しくなって、ついつい彼につられて、かなりの量を飲んじゃってる。

身体がフワフワして来た気がするし、何だか気持ちがいい。


だからと言って、まさか「あなたがスクール生のお母さんを抱きしめてたからです」とは言えない。

今、イヤなことと言ったら、真っ先に浮かぶのはこれしかないんだけどなぁ.......


「あ、でも、言えることも、一個ある。」

「何?」

「昨日、元カレから結婚式の招待状みたいなのが届いてた。」

「マジ? って、『みたいなの』って何だよ。」

「だって、開けてないもん。」

「なんで? やっぱ、悔しいから?」

「ううん。思い出したくもないから。」

「そんなひどい別れ方したの?」

「お局にいつの間にか獲られてた.......って言うか、優しすぎて『NO』が言えないタイプだったから、上手く丸め込まれたんだと思う。」

「何だ、それ? 最悪だな。」

「うん。でも、裏切られたってわかった瞬間、一気に気持ちが冷めちゃったみたいで、あんまり悲しくはなかった。」

「もしかして、そんなに好きじゃなかったとか?」

「わからない。」

「わからない?」

「うん。そのくらいショックだったし、もう忘れたい。」

「.......そっか。」

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