今しかない、この瞬間を
「あいつ、まだいるのかな?」

「いるかもね、女々しいタイプだから。」


彼は立ち上がって、カーテンを少し開き、窓の外を覗いた。

無言で、あまり表情を変えない当たり、本宮くんはまだ私を待ち続けているのだろう。


「まだいるよ。気にならないの?」

「気にはなるけど、絶対、会いたくない。」

「そこまで嫌ってるってことは、どうしても許せないってこと?」

「うん、まぁ。」


ベットの方へ戻って来ると、彼はさっきまでより、心持ち、私に近い位置に座った。

でも、本人的には、その近さを何とも思ってない?

もしかしたら気が付いてすらいないのかもしれないけど、座っている場所が場所だけに、その距離感にドキマギしてしまう。


「ちなみに、どのくらい前のことなの?」

「はっ、半年以上前。一年は、経ってないと思う。」

「もう未練とかはないんだ?」

「そんなの、まったくないよ。って言うか、裏切られたダメージしかない。」

「ふ~ん。なら、今、あいつがここに来てる意味もわからない?」

「うん。」


こんなこと、彼に細かく話したくはないけど、かくまってもらってる以上、聞かれたことには答えるしかない。

でも、こういう話って、男の子的にはどうなんだろう?

あんまり詳しく話したら、ドン引きされたりしないかな.......


「何が許せないの?」

「え?」

「あ、いや、あのまま放っておくのも可哀想だし、自分でそんなことしたくせに、あいつは何しに来てるのかなと思ったから。」

「.......。」

「やっぱり、許せないのは捨てられたこと?」

「.......ううん、多分、違う。」

「じゃあ、何?」

「守ってくれなかったこと、かな。」
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