今しかない、この瞬間を
だから、余計に、俺は彼女との「幸せ」を守りたかったのかもしれない。

なのに、それを感じられたのは、ほんの僅かな時間だけ。

しかもあの子がくれたのは、偽物みたいな「幸せ」だ。


それでも、付き合っている間、俺がそこにしがみついていたのは事実だし、騙されたまま、彼女の機嫌を損ねなければ、「幸せごっこ」はまだ続いていただろう。

所詮、「ごっこ」なんだから長くは続かなかったと思うけど、少なくとも、それを信じているうちは「幸せ」を感じていられたはずだ。


つーか、そもそも、「幸せ」って何なのかな.......

本気でだんだんわからなくなって来た。


人を信じるのにはすごくパワーがいるし、一緒に夢を追い求めるためには努力がいる。

「幸せ」を守るためには、頑張ることも、我慢することも必要だと思う。


だけど、裏切ることは簡単だし、疲れたら、今、求めている幸せを諦めればいいだけだ。

そうすれば、すぐまた別の幸せを探すことができるし、いろんな無理をしなくて済む。


結局、そういうことなのかも。

母さんの人生をかけた選択も、彼女のわがままな冷たい仕打ちも。

時間をかけて悩んで決めようが、一時の感情で気持ちを切り替えようが、結論は同じだ。


恐らく、同じ「幸せ」は長く続かない。

なぜなら、一人では手に入れらないものだし、人の心を同じテンションで捕まえておくことは難しい。

それでも続けて行くためには、お互いに心のどこかで嘘をついたり、妥協をしたりするしかない。


そうなれば、それはもう最初に欲しいと望んだ「幸せ」じゃないし、一度歪んでしまった「幸せ」は、いつか壊れてしまうに決まっている。

結局、永遠に続く「幸せ」なんて、この世にはないのかもしれない.......
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