今しかない、この瞬間を
時間をかけて、死ぬ気でリハビリすれば、どうにかなったのかもしれない。

でも、俺にはもうそこまでしてサッカーに食らいついて行く理由も目的もなかった。


だから、本当にそれでいいのか何度も聞かれたけど、迷うことなく引退を決めた。

そうしたら、今まで無意識に背負って来たモヤモヤしたものが無くなったような気がして、心の中がスッキリした。


まぁ、結果として、引き続き、今もこうしてサッカーに携わっている訳だけど、気持ちの持ちようが全然違うし、子供と触れ合うのは純粋に楽しい。

コーチとして誘ってくれた田澤さんには、心から感謝している。


サッカー以外、何もしてこなかった俺が仕事を探すのは大変だっただろうし、だからと言って、あのタイミングでグダグダしていたら、俺はただのダメ人間になっていたに違いない。

適当に身体を動かして、子供と笑って、喜んで.......

気楽に過ごせるスポーツジムは、まっとうな仕事を初めてする俺には、マジでありがたかった。

健康をうたう会社だけに、明るくて元気な人も多いし、職場の雰囲気にもすぐ慣れた。

心配していた両親も安心してくれたし、このまま平穏に過ごせれば、それでいいと思っていた。


だけど、しばらくして精神的に余裕ができてくると、一人でいる時間が急に寂しく感じるようになって来た。

考えたら、大学も選手時代も寮暮らしで、周りに誰もいないなんてことはなかった。

長続きはしなくとも、何だかんだ言って、大学時代には何人かの女の子とも付き合っていたし。


どこか世間を斜めに見て、捻くれていた俺だけど、思えば、いつも誰かがそばにいて、何だかんだと世話を焼いてくれた。

今になって、それに気付くなんて、俺ってアホだよな。

一人でいるって、こんなに寂しいものなんだ.......
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