今しかない、この瞬間を
ソワソワしちゃいそうなゴージャスなエレベーターに乗り、24階で降りると、陽成は一番奥の扉の前まで走って行った。

ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポンって、しつこいくらいチャイムを鳴らすけど、やっぱり中からの反応はない。


がっかりした様子の陽成が痛々しい。

可哀想だけど、やっぱり不在なのか?

マジで、どこ行っちゃたんだろうなぁ.......


陽成の気持ちを考えると、母親が腹立たしく思えて来る。

仕方がないから、このまま陽成を連れてseedsに戻ろうかと思ったその時、玄関のドアがゆっくりと開いた。


中から出て来たのは、陽成の母親。

だけど、顔面蒼白っていう感じで、何だかフラフラしている。


「だっ、大丈夫ですか?」

「........はい。」

「もしかして、具合悪くて、倒れてたとか?」

「そう、みたい.......。」


そこまで言うと、彼女はその場にへたり込んでしまった。

マジか? ホントに大丈夫なのか?

早く中で休んだ方がいいんじゃないか?


「ママ~!!、ママ~!!」

「ごめんね、陽成.......。」


状況の掴めない陽成は、驚いて涙声になっている。

これはリアルにマズいと思って、急いで靴を脱いだ。


「すいません、上がらせてもらいます。どこの部屋に運べばいいですか?」

「ごめんなさい。こんなことまで.......。」

「とりあえず、リビングでいいですよね? 陽成、教えて。」

「うん!!」

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