今しかない、この瞬間を
そもそも、離れたくないとか、そばにいたいとか、彼女の代わりはいないとか.......

そこまで思ってるのに、「愛していない」ってどういうことなんだろう。

事情を知らない私には、難しすぎてさっぱりわからない。


だけど、二人の間でその不思議な感覚はきちんと共有されていて、彼と朱美さんがお互いの存在理由を認め合っているっていうことだけはわかる。

何となく間に割り込んで行けないと思ってしまうのは、そんな風に二人の「絆」みたいなものを感じてしまうからだ。


それが何なのか、私には見当もつかない。

正体がまったく掴めないから、手の施しようがない。


だから、苦しくて、悔しい。

切なくて、切なくて、心がはち切れそうだ。

彼が幸せな恋をしているとは思えないだけに、黙って見守るだけしかできない自分が、もどかしくてたまらない。


愛してなくても、愛されてなくても、ずっと一緒にいたいって、どういう意味なの?

一緒にいると安心するのに、付き合ってもいなければ、どこまで続くかわからないだなんて.......


それって、つまりどういう関係?

「不倫」って、そういうものなの?

それでも割り切れちゃうほど、強く惹かれ合ってるってこと?

だって、そこまで思えるってことは、相当深いところで、理解し合えてるっていうことなんだよね.......


少なくとも、この前の彼の心底穏やかな笑顔を見る限るでは、実りはなくとも、間違っていても、二人はとても幸せそうに見えた。

だから、ショックを受けて、私なんかに勝ち目はないと思った。


だけど、あの時はこここまで複雑な思いにはならなかった。

「不倫」であるにせよ、彼と朱美さんは愛し合っていると信じてたから。

彼がこんな虚しい恋をしているなんて、想像もつかなかったから。

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