今しかない、この瞬間を
淵江コーチに誘われたことに、ほんのり焼きもちを焼いてくれたのがわかったから、それからの一週間は、彼と二人きりになる度、少しドキドキした。

知り合った頃に感じていたドキドキとは、また違う感じ。

たとえそれが恋愛対象としてでなくても、「友達」としてであれ、「妹」としてであれ、彼が私を身近に感じてくれていることを、初めて実感できたのが嬉しい。


明後日は約束通り、みんなでたこ焼きパーティを開催する予定だ。

キュートで明るい里菜ちゃんと、いつも元気な年下彼氏の毅くんは、見ていて微笑ましくなる可愛いらしいカップル。

二人が一緒なら彼も気楽に楽しめるだろうし、どんな賑やかなパーティになるのやら、今から待ち遠しくてたまらない。


でも、その前に.......

私にとっては毎週恒例の嫌な時間がやって来る。

今日は、朱美さんが陽成くんを連れてスクールに来る日だ。

バスに乗る子たちのお迎えに行くのにも、ある意味、個人的には気合いが必要になって来る。


だけど、重い足取りでゆっくり階段を上って行くと、今週はもう一人、別の子の母親もいて、朱美さんはその人とおしゃべりに興じていた。

先週、あんなことを言っちゃったせいもあり、朱美さんに会うのはちょっぴり怖かったから、その光景を目にした途端、何だか気が抜けてホッとしてしまった。


スクール終了後も、もう一人の母親が子供のことについて彼に熱心に話しかけていたおかげで、朱美さんとは挨拶程度しか交わしていないようだった。

細かく観察して、そんな些細なことにさえいちいち喜んでるんだから、私って自分で思ってるよりもずっと嫉妬深いのかも。

このまま彼を好きになればなるほど、性格が悪くなって行っちゃうような気がする.......
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