Different Real
「神尾くん、私の、私の話もしたい...。今日は聞いてばっかりだったから」
震える神尾くんの手をぎゅっと握り締めて私は笑った。
少し驚いたように目を見開いてから彼は笑った。
「榎本の話、聞かせて......」
静かに響いた神尾くんの声が、いつもと同じで少しホッとした。
「私は物心ついたときからずっとお母さんと2人で暮らしてるの。」
お父さんが浮気をして出ていったこと、母親はずっと働いていてほとんど家にいないこと、家族で出かけることをしたことがなく休みの日もずっと1人で本当は寂しかったこと。
きっと神尾くんが今から話そうとしていることなんかよりずっとずっと大したことない話。
それでも私だけ辛いことを話さないのは嫌だった。
神尾くんのことを知りたいのと同時に、私のことも知ってもらいたいと思った。