Different Real
カァーカァー
どれだけアリに夢中になっていたんだろう。
いつの間にか辺りは夕日で赤く染まっていた。
「そろそろ帰るかー!おなか減ったー!」
大きく伸びをした陸が立ち上がる。
「うん、帰る。今日は父さんがはやく帰ってくるんだ」
ニコニコと嬉しそうに恭平は笑った。
「私もかえ.........あ、あれ......」
「?」
どうしよう。
どくん、どくんと心臓にいやに鳴る。
だって、帰り道がわからない...。
初めての場所。
よそ見しながら適当に歩いてきた道。
覚えているわけがなかった。
「なに、杏璃どーした?」
陸が不思議そうに私を見る。
「おうち、分からないの...どーしよぉ......」
不安な声が小さく響いた。
「えー!帰り道わからないの!?」
陸の声に余計不安になり、涙が溢れてきた。
それはボロボロと頬を伝い止まらない。
「な、泣くなよ!大丈夫だって!な?」
陸がワタワタと慌てながらフォローを入れるも涙は止まらなかった。
そんな時、私の右手をギュッと優しく誰かが握り締めてくれた。
「大丈夫だよ。おうちが見つかるまで僕のおうちに住めばいいよ」
そう言ってにっこりと笑ったのは恭平だった。
その笑顔はまさに魔法。
私の涙を一瞬にして止めた。
「...うんっ。」
こくんっと頷き、恭平に手を引かれながら夕日で赤く染まる道を3人で歩いた。
結局、恭平の家に着いたときに自分の家も見つけた。
家がお隣だということがその時判明した。
私の家の隣に恭平の家があってその隣には陸の家がある。
なんだかすごく不思議な気持ちだった。
「また遊ぼうね」
笑顔で手を振る恭平から私は最後まで目を逸らすことができなかった。