彼の優しさ

ー卒業式、当日ー

予定どうりに式は過ぎて、わたしは真依や製菓部のメンバーと話して中庭にいた。

早咲きの桜が咲いている。(入学式と卒業式に桜が咲いてあるように、早咲きと遅咲きの桜が中庭と校門にこの高校にはある。)

一人で、桜の色と空の色の両方を一人で空を見上げていた。

風はまだ冷たいけど、春までもう少しと考えていた。

「風邪引くぞ」と声を掛けられて、そっちを振り向くと、西原先生がいた。

「桜と空の色を見ていたんです。…とても綺麗なんですよ。」そう言うと先生も空を見上げて

「そうだな…」風が草花の揺らす音と遠くで賑やかな声が聞こえる。

先生に向かって

「そろそろ家に帰ろうかと思います。…では、また。」そう言うと

「あぁ、またな。」今ではそのぐらいしか言えない。…先生も分かってくれるだろうか?



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