彼の優しさ

なんだか気恥ずかしくなってケーキに手を出した。

「ん、美味しい…入っているベリーは…ラズベリーとブラックベリー?」一番下の生地はビスケットで滑らかで濃厚なチーズの間にベリーがあって、ベリーの酸味がこってりしすぎないようにしてくれている。カプチーノを少しだけ飲んでみるとこちらもわたしの好みで先生そっちのけで楽しんでた。

ふと、気が付くと先生を忘れていた。

「あ、ごめんなさい。わたし、カプチーノとケーキに夢中になって…」

「いや、気にしないで?…昔と変わらない所があって安心していたんだ。」…えっ?

………幼かったわたしの事を知っている?

考えて、じーっと先生の顔を見るとよく遊んでくれた二人のお兄ちゃんとお姉ちゃんを思い出した。

「もしかして…ゆーお兄ちゃん?」おそるおそる聞くとニッコリとわらって先生は

「漸く、だね?藍ちゃん。」……そうだ。ゆーお兄ちゃんはこんなしゃべり方で…

「いや、実は幼なじみだ、とは藍ちゃんが高校生の時は仕事が仕事なだけに言えなかったんだ。…ごめんね?」

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