彼の優しさ

「──藍。」思った以上に固い声が出てしまった。

「ひゃい!」ひゃい!ってなんだよ思うと笑えて力が抜けた。

「ごめんね?怖かった?…でも、俺の本気を知って貰いたかったんだ。」



「好きだ。」藍の息を飲む音が聞こえた。…そして藍の目が潤んでいく。

「………たし、も」えっ?

「わたしも、ずっと……ゆーお兄ちゃんが初恋の人で、引っ越した後でもゆーお兄ちゃんを越える男の人なんていなくて…」

「戻って来た後も心の何処かでゆーお兄ちゃんを探してた。…高校に転入してから西原先生と話していると記憶の中のゆーお兄ちゃんじゃ無くて西原先生が好きになって…」潤んでいた目からとうとう涙がこぼれ落ちた。

「藍、俺と付き合って?」そう言うと藍はコクコクと首肯してくれた。

たまらず席を立って藍を抱き締めた。

暫くそうしていると

「おいおい、」と春仁の声が聞こえたけど無視。…やっと両思いなんだ。そっとしておいてくれ。
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