彼の優しさ
「いつの間に血液なんて採ったんですか?」
「寝ている時にな。」おーい。
「叔父さんから許可はちゃんと取った。」違うよ。
……ま、どっかずれてるのが颯斗義兄さんだからしょうがないんだけど。
「では、今日帰るか、一泊してから明日の朝帰るか、どっちがいい?」って颯斗義兄さんは言うけど
「帰る。明日、夏期講習だから。」そう言ってベッドから足を下ろそうとすると
「夏期講習は休め。…ちゃんと聞いていたか?
今、藍の体はボロボロなんだ。万全じゃないのに夏期講習に行ったらぶっ倒れるぞ。」……相変わらず言葉が悪いな。
「わたしは今、頑張らなきゃダメなの。なんでも出来る颯斗義兄さんや雪奏姉さんとは違うんだから。」意地を張っているのは分かっていたけど、どうしても劣等感が根底にあって自分の意思を曲げたくなかった。…そうしたら負けを認めているような気がして。