彼の優しさ
「わたしを産んでくれた事は感謝してる。…けど子どもはわたしじゃなくて仕事一番で何も振り返ってくれなかった。…8月にあった事もちゃんと話そうとした。…あの人達、何て言ったと思う?【出張なんだ、後にしてくれ】だよ?…信じられる?だから何年かしたらアズサを引き取ってわたしひとりで育てるの。経済的に自立したら縁を切ろうとも考えているの。」
『本気、なの?』雪奏姉さんの声が震えている
「本気だよ。」沈黙が流れる。
「…まぁ、寮則でバイト禁止だからバイトするからその期間家に戻らなきゃね。両親としたらそこが最後の勝負期間だろうね。…今までと同じなら縁を切るし、この状態を快復すれば疎遠になるだけかもね。」
『……藍。聞こえているか?』父さん?
「聞いていたんだ。…ってことは雪奏姉さんもグルか。趣味悪いね。」怒っている筈なのに頭の中はとてつもない程冷静だ。…わたしは本気で怒ると冷静になるタイプみたい。
『藍。親をなんだと思っているんだ?』
「それを言うなら子供を何だと考えているの?意思のある玩具?それともメイド?…5年前あたしがインフルエンザにかかっても二人とも仕事に出ていったよね?…まだあるよ。そのインフルエンザのせいで肺炎を併発して入院しても入退院の時一回ずつだったよね?来たの。…しかも言い訳何か覚えてる?【仕事だった】ふざけるのも大概にしろって言いたくならない?」