彼の優しさ
「ッ!!…ゲホ、ゲホ…ゲホ…」こいつは…食ってる時に言うなよ。
「わっ!図星?ねぇ、誰なの?」と俺が喋れないのにいろいろ畳み掛けてきた。
喋れるようになってから
「ともかく、後で食って良いのを渡すから」と宥めてから夕飯を食べた。…勿論。あのケーキの分は残して。
麻美に食べて良いやつを渡してからケーキを食べようと蓋を開けて手に取った。フォークはキッチンから持ってきた。いざ、とフォークをケーキにさして、一口食うと、まず、思ったのが「なにこれ!」だ。旨くて意識しなくても口角が上がる。甘すぎず、ちょっと苦めな味が堪らない。二口目、三口目、と口に運んであっという間に無くなると思ったのが『もっと食いたい…』だった。
俺が甘いものが苦手であまり食べなかったものが一番好物に君臨した瞬間だった。