彼の優しさ
「断った?いや、此方にはなにも話しは来ていないが…」とおじさん。
「それはこの人が作為的に情報を渡さなかっただけでしょう。わたしの事を手駒にするために。」一旦深呼吸をして
「どうしようも有りませんね。…以前交わした契約をお忘れでしょうか?…それではごきげんよう。」そう言うとわたしは席を立ってコートとマフラーを手に取り、店の外に出た。
「藍姉ちゃん!!」振り向くと翼ちゃんがいる。
「良くしてもらっていたよね?でもなんで?」…分からないか。
「翼ちゃん。わたしは貴方の事は弟の様に可愛がっていただけなの。…それにわたしには両親に貰えなかった言葉を後少しすれば言ってくれる人が居るの。…わたしにはそれで十分なの。…翼ちゃんは知らないけど、両親とわたしは既に絶縁の1歩手前まで来ていたのよ。今回が決定打になった。…これからは只結城の苗字だけを使わせて貰うだけになるかもね。もう親族の皆には会うことも無くなると思うからわたしなんか忘れていい人を見つけるの。…良いわね?」
「そんな…」何も言葉が出ない状態みたい。
「じゃあ、さよなら。」と言ってわたしはアズサ奪還作戦をたてながら家に帰った。