彼の優しさ
手は動かしていたから料理を作り終えてお皿に盛り付けていく。作ったほうれん草のお浸しは切ってちょこんと鰹節を乗っけてお皿ごとラップにくるんで冷蔵庫に入れた。
「なあ、藍。俺たちが悪かった。…だから家に戻ってきてはくれないか?」…はぁ。
「『俺たち?』そう言ったのになんでお母さんは居ないの?本当に謝る気があるなら二人揃って、でしょう。なのに居ない。それっておかしくない?」
「っ!!それは……」
「この場に居ないという事はお母さんはどうでも良いって考えて居ることだもんね?…見合い話を強行するぐらいだもの。」
「……ッ!!そんな事、俺は容認していない!」
…そう。
「意見の食い違いがあるみたいね。それにルチルたちの栄養面も良くないみたい。…毛艶がわたしが家に居る前より無いよ。ちゃんとルチルには構ってあげてね。」
「……アズサはどうするつもりなんだ。」
「わたしの所に連れて帰ります。元を正せばアズサはわたしの我が儘から飼い始めたんだから、最後まで責任を持つよ。」