彼の優しさ

そんなある日、俺は何故か時宮邸の東側にある応接室の一室に居た。

結城の母親が見合い相手に会わせた事が時宮の当主にバレたから。…俺は第3者の目線で意見を述べて欲しい、だそうで。

上座に時宮の前当主と当主。…当主のご主人は急な病院からの呼び出しがあったそうで不在。

下座に結城の両親。

どちらでもない両者の顔が見える所に俺は座った。

「さて、この件釈明はあるか?雪奏から聞いた所によると距離を置くべきだとそう聞いたんだか。」は、迫力がスゴい…俺がこの場に居たくなくなる。流石、大企業の会長職を勤めているだけはある、としか言いようがない。

「…ありません。」結城の父親が答える。

「あの子は何も言わないから…」そんな結城の母親の呟きが聞こえた。

「なら、藍ちゃんが何かを言おうとした時、ちゃんと聞こうとした?…藍ちゃんが『運動会とかの行事、来てくれた事無かった』て『ご飯作るだけ』だとたったそれだけで子どもに愛情が通じると考えているのですか」当主の言葉。

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