彼の優しさ
「…今の年齢でアレルギーの完治は難しい。胃炎なら投薬治療とストレスの除去出来るなら、なんとかなったかも知れないが、藍の場合、慢性化しているからな。今の所は食事療法を勧めるな。胃炎にはトマトだぞ。」
「トマト?颯斗、どうして?」
「簡単に言うとトマトのリコピンが胃の粘膜に良い働きをしてくれるんだ。」
ふ~ん。はじめて知った。
「情報、ありがとう。」前当主が言ってから
「私共はこの場を開くだけで後は藍ちゃんのカバーに入ります。…藍ちゃんの逃げ場が無いのはかわいそうですし、考えて見れば藍ちゃんの考えでは『両親に裏切られた』と思っているはず。…この状態ならこの場を開いた、という事で私を始め、雪奏や颯斗君、西原君にも裏切られた、と思わてしまえば信用は無くなる。」
……それは困る。約束をしている身と知れば事は最悪だ。
「……分かりました。」そう結城の父親は言うと席を立ち、後から結城の母親も立ち上がり、応接室を出ていった。…俺も出ていこうと、声を掛けようとすると
「藍ちゃんの事、どうするの?」と当主が言った。…こっちもバレていたか。
「私は、公務員です。なので4月1日に結城さんには答えを言います。」