もう一度さよならを言うために
実はHとは仲が良いというわけではなかった。
だかが同じクラスメート、というだけだった。
一緒に遊びに行ったこともないし、部活動も一緒ではなかった。
ただ、家に帰るまでの話し相手が欲しかったのかも知れない。
今はその理由を聞くこともない。

ただ、Hは僕に兼ね備えていないものは一杯あった。
容姿から始まり、野球部の主将…女の子にも困っては居なかっただろう。
僕とは違った高校、大学生活だったはずだ。


「久しぶり。成人式以来か。帰って来てたの?」
僕は22年間、地元の大学に進学し、一方のHは都内の大学に通っていた。
大学でも野球をやっている、という話を誰かから聞いたことがある。
「まあな」
「オマエ、就職は?」
車掌が発車のアナウンスを始める。
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