あまのじゃくな私が恋をした
「そう言うなよ。せっかく来たんだし飲んでけ‥」
ニタニタと笑う店長さんに大也は気まずそうに
「……奥、空いてるか⁈」
「個室は塞がってる。そこのカウンターなら障子戸で区切ってあるからどうだ⁈」
「……あぁ…そこでいい」
店長さんの視線は、今だに手を繋いでいる手元にあるらしくニタニタと笑みが止まらない。
それに気づいた大也が、とっさに手を離した。
ずっと繋いでいた温もりが消える寂しさで、手のひらを見つめていた。
「どうした⁇」
「……手…離れちゃった」
とっさに寂しかった感情が言葉に出てしまう。
「………」
大也は、なぜか口元を押さえしばらく身動きしない。
「ボーと立ってないで座れ」
店長さんはまだニタニタと笑ったまま席に着くように促す。
靴を脱ぎ座敷の席を通り抜けて障子戸で区切られたカウンター席は、掘りごたつみたいに足が下ろせた。
「何にする⁇」
「ビールとえみりは?」
「私も同じで…」
「あとは適当に作ってくれ」
「…了解…はいよ」
あっという間に出されたビールと付け合わせの小鉢。
離れていく店長さんを確認した男は、ビールのジョッキを掲げる。