あまのじゃくな私が恋をした

「さすが…お兄さまね」

ちょっとからかい口調で大也を見た。

「ふん…お前の魂胆丸分かりだ。しばらく、静観してやる」

ちぇっ…バレてたのね。

ぺろっと舌を出した。

「ガキ…」

ボソッとつぶやく男の声は、親しみを込めて言ってるように聞こえた。

「ふん…どうせガキですよ…私の天婦羅まだかな?」

持っていた箸で円を書いていじけながら
つぶやき返した。

大也が急に席を立ち、カウンターの奥へ行く通路を通って奥にある調理場に行くと、しばらくして天婦羅の盛り合わせを1つ持って席に戻ってきた。

「ほら…食え」

「大也さんのは⁇」

「あいつ、オーダーでてんてこまいになってるから1つだけにしてきた」

「そうなんだ…大也さんありがとう。お礼に好きなのあげるね。どれが好き?」

「……カボチャ」

「カボチャ好きなんだ。サラダもカボチャだもんね」

箸でカボチャを摘み、男の取り皿にのせようとするがいたずら心が湧いた。

「……はい…あーんは⁈」

男の口までカボチャの天婦羅を運ぶと、
拒否ると思えた男が…笑みを浮かべ口を開いた。

あれ⁈
思っていた反応と違う。

「……うまいな」
< 32 / 79 >

この作品をシェア

pagetop