あまのじゃくな私が恋をした
キスの余韻が残る唇と首筋の残された痕をしばらく鏡で見つめルージュを塗り直した。
ドアを開けるとムスッとしている男。
「……遅い」
外で待ってるって目の前だったの⁈
てっきり、お店の外だと思っていた。
「別に待ってくれてなくていいのに…」
不機嫌な男に不機嫌で返す。
「……まったく、お前はガキのくせに可愛くない」
「……ガキ⁈…そのガキに大人のキスをしたのはどこの誰よ」
心が壊れかけている私は、伝えられない想いのかわりに叫んでいた。
「…………」
答えない男の横を通り過ぎ、カウンターの前を通ってお店を出ようとすると、背後から手を掴まれる。
一瞬、大也だと思ったのに…
名前も知らない隣に座っていた男だった。
「帰るの⁈‥送って行くよ」
「……」
もう、どうにでもなればいい。
この男について行こう…
「悪いけど…こいつ俺のなんで君は違う子さがしてくれる⁈」
「はぁっ、なんだよ。俺はこの子と約束したんだぞ。お前、さっきトイレから出てきてずっとドアの前で立ってた男だよな…この子と何してたんだ…」
いやらしい笑いを浮かべジロジロと見てくる。
「……」
一瞬、大也の瞳が怒りを孕んだ。