あまのじゃくな私が恋をした
掴んだ手は離してくれない。
逃げないからと目で訴えても鋭い視線を向けられ萎縮する。
「大也、怖い顔するからえみりちゃん怖がってるぞ」
助け舟を出してくれた悠ちゃんさんのおかげで掴んでいた手が解けたのに、代わりに手を繋いでくる男に戸惑ってしまう。
この手は何?
戸惑う私に悠ちゃんさんは苦笑する。
「えみりちゃん…何か飲む?」
カウンターの向こう側からマスターの大輔さんが声をかけてくれる。
「……あっ『烏龍茶でお願いします』」
私が答える前に大也が答えるのでマスターも苦笑している。
「……」
もう…知らない。
私は、不貞腐れて大也が飲んでいたであろうビールを奪うと一気に飲み干した。
そんな私に冷ややかな視線を向ける大也を無視しておかわりとマスターに求める。
「……一杯だけだぞ。すみません、こいつのとふたつお願いします」
外面のいい大也にムッとする。
「えみりちゃん…今日は合コンだったの⁈」
「そうなんです。しつこい男から逃げようと思ってトイレに行ったら大也さんに捕まってしまって…ここにいるってわけなんですけど……」
「ふふふ…見てたよ。肩に腕回されて耳元で何か言われてたよね」