あまのじゃくな私が恋をした
おかしいでしょう⁈
普通、ここはこの胸に視線が動いてウブな男なら顔を赤くするし、慣れた男なら
にやけるはずなのに…なんでそんな無表情なのよ。
「えっ…これ全部ですか⁈」
「手伝う気がないなら手伝ってくれなくていいよ」
やば…怒ってる⁈
「手伝います」
どうしてよ。
こんな思い通りにならない男、初めて…
慌てて、人参の皮をむき始めた。
その時男が一瞬、口角を上げ笑ったように感じた。
そう感じただけで、気のせいだとわかってる。
だって、目の前にいる男は表情一つ変えていない。
さっき見せたあの笑顔はどこに行ったの⁇
黙々と何人前かわからない量の野菜を次々と切り終えて
「大也さん…終わりました」
「ありがとう…助かったよ」
突然、さっき見せた笑顔で微笑んでくれた。
それだけなのに…私の心はキュンと高鳴る。
「ただ、野菜切っただけでたいしたことしてないですよ」
『ありがとう』って言われてうれしいのに…素直になれない。
「美雨も君ぐらい手伝ってくれたらいいんだけど…」
少し離れた場所を見つめる男の視線の先には、美雨と真斗さん⁈
愛しいものを見る目で美雨を見ている。