敏腕社長に拾われました。
「ところで智乃ちゃん、さっきはなんでキョロキョロしてたの?」
私の横に並んだ胡桃ちゃんが、興味津々な顔をして聞いてくる。
やっぱり見られてたのね。永田さんじゃなくてよかったと思う反面、胡桃ちゃんに見られてたのも厄介だとため息をつく。
「それは……」
なんて答えればいい?
きっと胡桃ちゃんは、冷静でクールな永田さんしか知らないはず。私が何を言ったところで、信憑性にかけてしまうに決まってる。
でも私ひとりでは永田さんに勝てっこないし、ここは彼の裏の顔のことを話して味方になってもらうべき?
少し考えて『よし!』と心を決めると、胡桃ちゃんの腕を掴み体をぐっと引き寄せる。
「ちょっと智乃ちゃん、どうしたの?」
いきなり体を引かれ驚く胡桃ちゃんに構うことなく、顔を寄せて耳元に囁いた。
「ねえ、永田さんのことだけど……」
そこまで言いかけて、背後になにか気配を感じ一旦話すのをやめた。
誰かいる?
緊張しながら振り向こうとした、私の左耳に低い声が響く。
「私がどうかしましたか?」
驚き慌てて振り向けばそこには、口角を上げニッコリ微笑み、でもその目は一切笑っていない永田さんの顔がすぐそばにあった。