敏腕社長に拾われました。
ねえ私、一体どうしちゃったっていうの!?
辛抱たまらず椅子からバッと立ち上がると、その場から少し離れて虎之助を見た。
その顔は、至って普通。でもその後、『智乃、どうしたの?』とでも言いたげな顔をして薄ら笑いを浮かべたりもするから腹が立つ。
人のことをからかって楽しんでるなんて、虎之助ったらたち悪すぎ。
でも私も私。虎之助が何の気なしにやってることに、何いちいち過敏反応しちゃってるの!虎之助が勝手な男だって、わかってるじゃない。
そう、わかってる。わかってるのに、いつもの私でいられないから困ってるの!
これってもしかして……恋、だとか言わないよね?
イヤ、違う。これは絶対に恋なんかじゃない。万が一そうだとしても、今の私の精神状態は普通じゃなくて勘違いしてるだけ。そうだよね?
虎之助の顔を見上げると、胸がキュンと軋む。
これでも勘違い? 自分に問いかけてみても、答えなんて出るわけないじゃん。
「早瀬さん、どうかしましたか?」
そんな私の心を見透かしてか、絶妙のタイミングで永田さんが声を掛けてきた。
どうかしましたか? 何白々しいこと行ってるんだか。
だってこの人、虎之助に近寄る女は全部追い払うんでしょ? 特に私みたいなちんちくりん女は嫌いみたいだし。
「どうもしません」
強気でそう答えると、自分の席に戻った。