敏腕社長に拾われました。
「ねえ、今のって」
「俺、黙れって言ったよね? ゴミはお喋りするもんじゃないよ」
彼は唇を離すと、何事もなかったように話しだす。
一方、私はというと。あまりにも唐突なキスに面食らっている最中。
普通ごみにキスするか?
……って、私はゴミじゃないんだけれど。
いまどきキスなんて、『あっちでチュッ!こっちでチュッ!』と、街中どこでもみかける光景だけど。それは恋人同士がしてることで、私はこの人となんの関係もない。っていうかさっき会ったばかりで、名前もなんにも知らない赤の他人。
そんな人にゴミ扱いされて抱き上げられて、おまけにキスまでされちゃって。
この人ちょっと、頭おかしんじゃないの?
「訴えてやる」
あたりまえでしょ!
「はぁ、何言ってるの? 訴える? 俺を?」
彼の顔をキッと睨み、大きく顔を縦にふる。
「まあそんなに目くじら立てて怒らなくても。話は後でゆっくりとっと!」
私の怒りマックス顔とは正反対の涼しげな顔を見せる彼は、いとも簡単に私を高級車の助手席に収めると「逃げるなよ」と低い声でひとこと。