敏腕社長に拾われました。

そうなの?

でも宮口さんは仕事が多そうだし、ひとつでも誰かに仕事を回したほうが効率いいと思うんだけど。

虎之助が身の回りの世話や雑用をしてもらうなんて言っていたから、どんな仕事が与えられるか不安だったけれど。まずは仕事らしい仕事を任せてもらえたことに感謝しよう。

案内状やリストを見ていると、取引先の会社や人間関係が自ずと分かってくる。秘書として働くのならば、取引先や虎之助の交友関係を知っておくのは当たり前。少しでも早く秘書の仕事を覚えて、ここの一員として認めてもらいたい。

なんて偉そうなことを思っていても、ここにずっと勤めるつもりはないんだけれど……。

なんだかちぐはぐな気持ちが、私の心の中にグルグルと渦巻く。

虎之助言ってたよね、『先のことなんて、誰にもわからない』って。

ここで仕事を続けることになるかもしれないし、虎之助との関係だって変わってくるかもしれない?

でもとにかく今は、一文無しから脱却することが先決。その後のことは、またその時考えるとして。

宮口さんが用意してくれたマニュアルを開くと、仕事に取り掛かった。



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