敏腕社長に拾われました。
宮口さんのあの目、絶対に私と虎之助の仲を勘ぐってるよね? ここは笑ってごまかす?
可笑しくもないのに無理に笑顔を作ると、宮口さんにふんっとそっぽを向かれてしまった。
こんな見え透いた愛想笑いじゃ、どうにもならないよね。
仕方ないかと、がっくり肩を落とす。
「社長、どうされたんですか?」
そして今さら何をしても遅いと分かっていながら、虎之助に敬語を使ってみたりする。
「別にこの部屋では、虎之助でいいのに」
虎之助が良くても、こっちが困るっていうの!
心の中では虎之助にそう言って、顔では余計なことは言わないでと睨んでみせた。
ここで上手くやっていくには、宮口さんがキーポイントになるわけで。彼女を怒らせるわけにはいかない。そこんところ、虎之助によ~く聞かせなきゃいけないみたいだ。
なのに虎之助は私の心を知ってか知らずか、また宮口さんの気持ちを逆なでするようなことを口走る。
「智乃、昼飯行くぞ。俺の奢りだ」
どうして今このタイミングで、そういうことを言うかなぁ。頭が痛い……。
でもよく考えてみたら、私、今朝から何も食べてない。だからこんなに、お腹が空いてるのね。虎之助がベッドに潜り込んでなんかこなきゃ、朝食を食べ損ねることもなかったのに。
そう思うと無性に腹が立ってきて、お昼くらい奢ってもらわないと割に合わない!とすら思ってしまう。
でもここで『はい、行きます』なんて言ったら……。
考えただけでも、恐怖で体が震える。