敏腕社長に拾われました。
でも虎之助は彼氏でも何でもないし。元カレのところに荷物を取りに行くだけのことで、一緒に行くのもどうかと思うわけで。
虎之助には浩輔のところへ行く前に、ちょろっとメールしておけば大丈夫だよね?
そうと決まれば、浩輔にメールをっと。
チャチャッと簡単に行くことだけを伝えるメールを送ると、スマホをポケットにしまい秘書室へと戻った。
午後からは社内文章の作成や社長や専務・常務のスケジュール管理の仕方など教わると、最後に宮口さんから社長室の整理整頓と掃除を頼まれた。
「社長が気持よく仕事ができるように心がけるのも、秘書の大事な仕事よ」
本社棟の四階までの部屋は外部の業者に頼んでいる掃除も、五階の部屋だけは秘書室の仕事。いつもは胡桃ちゃんがしているみたいだけど、今日からしばらくは私がやることになってしまった。
これも宮口さんの嫌がらせ? なんて思ってしまう。
なんで私が掃除なんてしなくちゃいけないの? 虎之助の部屋の掃除は、マンションだけで十分。そう思いながらも掃除は嫌いじゃないから、全然苦ではないんだけれど。
でもさすがに、ここは会社の社長室。マンションみたいに物が雑然と散らばっていることもなく、掃除も整理整頓も簡単に済みそうだ。
案の定、社長室の片付けは十五分ほどで終わり、社長室の壁に掛けてある時計を見れば五時を少し回っていた。