敏腕社長に拾われました。
ここの終業時間は、確か五時半だったはず。これで今日の仕事は終わりかな?と秘書室に戻ると、会議が終わったのか虎之助と永田さんが戻ってきていた。
「お疲れ様です」
声をかけると、振り向いた虎之助の顔はかなりお疲れの様子。
「ああ、お疲れ。智乃、どこ行ってたの?」
「社長室の掃除ですけど……」
声もいつになく元気がなくて、ちょっと心配になってしまう。
「そっか。じゃあ俺は、もう一仕事してくるか。朱音さん、準備はいい?」
「はい、いつでも出発できます」
「よし。永田、車を正面玄関にまわしてくれ」
「はい」
朱音さん、準備はいい?ってことは、今日の会食には宮口さんが同行するのね。なんだ、そうだったんだ。
別に自分が連れて行ってもらいたいわけじゃない。ただ、虎之助と一緒でいいなぁと思っただけで。
……って、あれ? 私ったら何言っちゃってるの?
うん、あれだあれ。深い意味はないというか、美味しいものがタダで食べれていいなぁ~っていう食いしん坊的な発想だ。
虎之助のことをじっと見ていた目線を慌ててそらすと、自分のデスクへと向かう。するとそこに、見慣れない封筒が置かれていることに気づいた。