敏腕社長に拾われました。
『他人でも一緒に暮らせば情がわく』なんて言うけれど、私にもわいてしまった愛情。

会食は何時までかな?とか、帰りにケーキでも買っていって虎之助が帰ってきたら一緒に食べようかなぁとか。そんなことばかり考えてしまう。

智乃、先走り過ぎでしょ!

そんなことわかってる。そこが私のダメなところだって、重々承知してる。

まだ私の片思い──

だから今はまだ、同居人としてそばに居たい。そして虎之助がどんな人なのか、もっともっと知りたい。

まさか自分が虎之助に対して、こんな気持ちを持つことになるなんて。世の中、なにが起きるかわからない。


会社を出た頃はまだ明るかった空も、もう陽が落ちて真っ黒。少し高いところを走っているこの電車から見える夜景は綺麗で、しばし目を奪われる。

虎之助、今日の会食うまくいってるかなぁ。永田さんと宮口さんも一緒だし、仕事モードの虎之助なら心配はないんだろうけれど。

綺麗な夜景を見ながらでも、思うことは虎之助のこと。

これはもう早く帰って、虎之助の帰りを待つしかないでしょ! て言うか、浩輔のところへ荷物を取りに行くのも面倒になってきた。

でも浩輔とのことは、一日でも早く片づけたい。もう次が降りる駅だし、ここまで来たんだからやっぱり今日行くべきだよね。



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