敏腕社長に拾われました。
顔を少しだけ横に動かすと、涙でぼやけた目に映ったのは息を切らし血相を変えた虎之助の顔。
「だ、誰だよ、おまえ」
浩輔は虎之助の気迫に負けているのか、声が上ずっている。
「はぁ? なんで俺が、おまえに名乗らないといけないんだ。そんなことより、さっさと智乃から離れろ」
すでにパンツ一枚姿になっていた浩輔は虎之助の殺気を帯びた声に慄き、あっという間に私から離れると部屋の隅で体を小さく丸めた。
「虎之助……」
体を汚されずに済んだことにホッとしたのと虎之助がいることに、再度涙が溢れ出る。
虎之助はジャケットを脱ぎながら近づくと、それを私の露わになっている上半身に掛けた。
「このバカ女」
いつもならここで『バカ女じゃない!』って反論するところだけど。虎之助の言ってることはヒドいのに、その声色は優しすぎて涙で反論できない。
「ご、めんな、さい……」
素直にその言葉が口から出ると、虎之助の大きな手が私の頭をポンと撫でた。
「帰るぞ」
虎之助の声に小さく頷くとベッドから下りる。すると一瞬頭がクラッとして足元が乱れると、その体を虎之助が抱きとめてくれた。