敏腕社長に拾われました。

マンションの駐車場に着くと、虎之助に隠れるようにマンションの中へと入る。

「虎之助のジャケットを羽織ってるから隠さなくても大丈夫」

そう言っても、虎之助は首を立てには振ってくれない。それどころか、

「なんか今頃、無性に腹立ってきたんだけど」

と玄関の中に入るなり、私を壁に押し付けた。

「きゅ、急にどうしたの?」

ギュッと掴まれている右手首が痛い。

「なあ、あの浩輔ってやつに何された?」

「な、なにって……」

虎之助の視線でジャケットがはだけ胸元が露わになっているのに気付き、慌てて空いている左手で隠す。

「だから言っただろ、危機感がないって。それとも何、あいつに抱かれたかったとか?」

「違う! なんでそんなヒドいこと言うの? 私は、私は……」

虎之助のことが好きなのに……。悲しみから体が震えだし、目には涙が溜まり始める。

「悪い、泣かせるつもりじゃなかったんだ」

ゆっくり私との距離を縮めた虎之助が、まぶたに溜まった涙を唇でそっと拭い取る。そんなことをされたことのない私は、驚きで目を大きく見開いた。

「虎之助、な……」

なにするの?と言いかけた私の唇は、虎之助の唇で塞がれてしまう。



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