敏腕社長に拾われました。
その後のことは、よく覚えていない。
気づけば私たちはひとつになっていて。でもそれは無理矢理とか強引にとかじゃなく、虎之助はとにかく優しく丁寧に私を抱いてくれた。
愛されている……そう感じるのには十分すぎて、終わったあと私は自然と涙があふれる。
こんな気持ちになるのは初めてで、虎之助に体を寄せると子供みたいにギュッとすがりついた。
「何? そんなに気持ち良かった?」
虎之助は私の体を抱きしめると、頭をポンポンと撫でる。いつもなら子供扱いされているような気がするその仕草も、今はなんだか心地いい。
「う~ん。気持ち良かったけど、それ以上に幸せだったと言うか、虎之助とひとつになれて嬉しかったというか……」
今の私の中に膨らんでいる気持ちを言葉で表現するのは難しくて、そんなありきたりな言葉しか浮かんでこない。でも虎之助はそんな私の気持ちを読み取ってくれたのか、顎に親指を当て上を向かせるとチュッと唇を重ねた。
「俺もだよ。っていうか俺は前から智乃とこうなりたいって思ってたから、喜びは二倍、いや五倍増しだな」
そう言って虎之助は私の体を愛おしむように何度も撫でるから、くすぐったくて身を捩る。
「ちょ、ちょっと虎之助! そんなふうに体をさわられたらくすぐったい。虎之助にもお返し」
ふたりとも子供の頃に戻ったみたいにじゃれ合っていて、はたとひとつの疑問が浮上してきて、虎之助をくすぐる手を止めた。