敏腕社長に拾われました。
「うん、ごちそうさま。お茶、そっちに持って行くね」
ソファーに腰掛けた虎之助を見て声をかけると、キッチンへと向かう。冷蔵庫から冷えたほうじ茶を取り出すと、グラスと一緒に盆に載せリビングに戻った。
迷わず虎之助の隣に、今までより距離を空けずに座る。
体を重ねたからといって、いきなり恋人気取りするつもりはない。でもなんだか今は虎之助に甘えたくて、自分から体を寄せる。
そんな私に嫌な顔ひとつ見せず、虎之助はそっと肩を抱いてくれた。
「素直な智乃は可愛い。やっぱ人間、直球が一番だよ」
「虎之助は直球すぎるけどね」
私の言葉に虎之助は「そう?」なんておどけた顔を見せるけれど、そこが虎之助のいいところでもある。直球すぎるけれど、それだけじゃない。相手を思いやる気持ちもあるからこそ、その両方がうまく作用していて仕事に生かされていた。
虎之助自身が『俺、信頼めちゃくちゃ厚いし』と言っていたのも素直に頷ける。
それは恋愛にも言えることで、直球が飛んできて驚くこともあるけれど、ちゃんとフォローも忘れない。だからカチンと来ることがあっても、彼のことを嫌いになることはなかった。むしろ逆で、好き過ぎ?みたいな。
私はこの部分を、全面に押し出してしまう癖があるから気をつけないと……。
なんて、虎之助に肩を抱かれていい雰囲気なのにそんなことを考えていると、虎之助が「コホン」とわざとらしく咳払いをした。