敏腕社長に拾われました。
「何かひとりで考え事してるみたいだけど、ちょっと話いい?」
虎之助は肩に回していた腕を腰に移動させると、私をキュッと抱き寄せる。今までより体が密着して顔が近くなると、落ち着いていた鼓動が少しだけ速くなった。
「虎之助、顔が近いんだけど……」
「そうかな。別にいいでしょ、もう他人じゃないんだし」
いやいや、身体の関係を持ったからって他人は他人でしょ。と思いつつも、他人じゃないと言われて喜んじゃってる私もいたりするから厄介。
「智乃、何ニヤニヤしてるの。その顔、気持ち悪いよ」
「き、気持ち悪いって! そんな言い方しなくてもいいのに」
冗談だって笑う虎之助の脇腹に、チョップのお見舞い。
「痛っいなぁ。そういうことすると、話してやらないけど?」
相変わらず上から目線の虎之助にごめんなさいをすると、今までになく真面目な顔に変身。
これはちょっと真剣な話?
そんな感じを受けた私も、真剣な目で虎之助を見つめた。