敏腕社長に拾われました。

「もう智乃もわかってると思うけど、俺は二ヶ月くらい前からお前のことを知っていた」

「二ヶ月……」

二ヶ月といえば、私が前の会社でミスをした頃と重なる。やっぱりその時から、私のことを知ってたんだ。

「でも智乃の顔を見たのは、それからだいぶ経ってたからだったかな。たまたま製造工場に顔を出した時、課長に一生懸命頭を下げているキミを見かけてね。永田に「あれは?」と聞いたら、うちに多大な迷惑をかけた女だって教えられた」

「はは、多大……」

確かにその通りだけど、多大な迷惑とは永田さんらしい物の言い方だ。もうその時から、私みたいなタイプは嫌いだったんだろうと推測できる。

「まあその時は、スルッと流して聞いてたんだけど」

虎之助に流された私って……。

「それからずっと、頭ン中から智乃のことが消えなくて。智乃には悪いと思いながら、いろいろ調べさせてもらった」

「はあ!?」

何よ、調べたって。永田さんに命令したとか? じゃないとしたら、興信所とか使っちゃったとか?

どちらにしても、ちょっと引く。

虎之助のことを不審な目で見ると、体も離そうとして……失敗。逆に力強く抱きしめられて、身動きがとれなくなってしまった。



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